仲谷先生よりメッセージ

仲谷研究室10周年に当たって

 そうですか。もう10年になりますか。
 ソーシャルコミュニケーション研究室が誕生したのは2005年です。 この前年の2004年に立命館大学情報理工学部に教授として赴任し、 当時は研究室配属が4回生からでしたので、12月に第1期を選考しました。 当時はまだ理工学部情報学科の制度だったので、学部の全研究室が 配属対象だったのですが、39名の希望者の中から11名を選びました。 新任の私の研究室への希望が学部最多で、このことが本研究室の注目される きっかけになりました。おそらく出身が心理学という点が興味を持たれたのでしょう。 それ以後、研究室の人気は衰えず、常に学部、学科で注目される研究室になっています。
 この点は仲谷研究室の誇りですが、同時に課題でもあります。 と言うのも、2005年の後半の学生主事就任から、2006年〜2010年の副学部長、 2011年の学科長、2012〜2013年の総合科学技術研究機構長という 学部・全学役職への就任があって、研究室の皆さんに本当に充分な コミュニケーションや指導ができたのかという不安や反省があるからです。 本研究室を立ち上げる際に、研究テーマは学生の皆さんが最初にネタを考え、 教員との議論を通じて膨らませるという方針を打ち出しましたので、 コミュニケーションの時間を取れないことは本当に辛いことです。 それに、毎年10名を超す3回生が新規に配属され、研究室としては常時35名前後 の多感な時期の若い人たちを抱える訳ですから、人間関係に問題が起こっても 不思議ではありません。実際に様々な問題に直面し、話し合い、 場合によっては解決できないで拗れてしまったこともあります。 私自身も、何日も眠れぬ夜を過ごしました。研究室の運営は、2011年から 泉朋子先生が研究室に加わられたことで大きく改善はされましたが、 個人的な思いとしては、本当に申し訳なく思っていますし、 そのことが私を何段階も成長させてくれてきたと信じています。
 その一方で、学会論文誌や国際会議、国内学会全国大会で次々と学生の皆さんが 賞を受賞する嬉しい状況があり、ある意味では「親はなくとも子は育つ」 状態が現在に至るまで続いています。これは確実に、学生の皆さんの実力の 現れだと思っています。自ら問題意識を持って研究テーマを考え、 システム構築をして、現場の方々に評価をして頂くという、 経験の乏しい若い学生の皆さんにとって過大な負荷となる方法論を 実施し続けてきたこと自体が、皆さんを育てたと言ってもいいかもしれません。 また、学外との交流も活発になり、多くの企業や自治体と研究や コンサルティングなどで連携しています。特に最近は、学生の作ったシステムが 自治体でそのまま公開されて使われるという例が出てきたり、 マスコミに研究が紹介されることが多く、学生の皆さんの自信につながっていると 喜んでいます。
 そうやって、卒業生・在校生は、現在の第10期の10名を加えて120名以上になります。 これは驚くべき数です。これだけの学生の皆さんと私は交流してきた訳です。 中には、私に理解されず、不満を持つ人もいたでしょう。仲間と打ち解けず、 苦労した人もいたでしょう。でも、それらのすべてが一期一会、 掛け替えのない出会いであったと思っています。全員が、私にとっては 大切な教え子です。宝です。卒業生の中には、研究室にはちょっと行きにくいなと 思っている人もおられるでしょう。でも、思い切って再訪してみてください。 当時とは全くことなるメンバーが、同じように暖かく迎えてくれます。 飲み会は相変わらず続いています。酔って、好きなことを言っていた頃を 思い出してください。人生は捨てたものではありません。 いろいろな人があなたを支えてくれています。それを思い起こす原点が 仲谷研究室であったなら、望外の幸せです。これまでに多くの卒業生の方々が 研究室を再訪してくれていますが、仲谷研究室はいつでも卒業生の皆さんの 再訪を歓迎しています。
 学部創立10周年に学部長に就任する2014年、皆さんと過ごした日々を振り返り、 今後のことを共に語れることができればと、 泉先生を中心にパーティが企画されています。熱く語りましょう、 自慢しましょう、苦労を吐露しましょう、愚痴りましょう、ワイワイ騒ぎましょう。 集まって、騒いで、何かをつかんでもらえれば、思い出してもらえれば、うれしいです。
2014年1月19日 仲谷善雄